おサイフケータイ

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モバイルSuicaアプリでチャージ完了(2021年 3月21日リニューアル後)

おサイフケータイは、一部のスマートフォンに搭載されている FeliCa(フェリカ)機能を使った非接触決済の仕組み・サービス。

対応機種

中古端末を購入/譲渡する前に「おサイフケータイ」のメモリクリアを確認しよう

ソニーJR東日本が共同開発したFeliCaをベースにしているが、「おサイフケータイ」はソニーとNTTドコモが共同開発したもので、NTTドコモにライセンス料が入る仕組みになっている。

そのため、ドコモ以外のキャリアやSIMフリーの端末でも利用できるが、ほぼ日本でしか使われないため、対応機種は日本向けに販売されている端末に限られており(iPhone 8 以降は例外)、海外メーカーを中心に非対応の機種も多い。

かつては携帯電話PHSフィーチャーフォン、いわゆるガラケー・ガラホ)にも搭載されていたが、近年はスマートフォンにしか搭載されておらず、フィーチャーフォン向けサービスは2020年頃までにほぼ停止された。

本稿では、特記無い限りAndroidスマートフォン向けの操作を扱う。

中古端末の注意

「おサイフケータイ」に対応するAndroidスマートフォンの中古端末を購入するときには、おサイフケータイのメモリクリア済みになっていることを確認しよう(右図)。

「おサイフケータイ」を使っていたAndroidスマートフォンを手放す(機種変更する)際は、使っていたサービスごとに機種変更手続きが必要。手続きが完了すると該当サービスが使っていたメモリがクリアされるので、必ず後述の方法で本体リセットする前に全てのメモリがクリアされていることを確認しよう

メモリクリア(初期化)方法

比較的新しい機種では、ブロック数ではなく、「未利用」または「利用中」と表示される(Xperia 1 の例)
以前の機種では、「共通領域」と「鉄道・バス領域」が表示される。全てが「0 / xxx ブロック」になっていればクリアされている

スマートフォン本体をリセットしても、FeliCaのデータは消えない。大手キャリアや端末メーカーとFeliCaデータ消去ツールを導入している一部の中古店を除き、後から消すことができない

「おサイフケータイ」で使われる「セキュア・エレメント」は Android OS とは独立しているので(後述)、本体 (Android OS) をリセットしても「おサイフケータイ」はクリアされない。おサイフケータイの消去(機種変更手続き)をせずに本体リセットしてしまうと、「セキュア・エレメント」にデータが取り残されたままになってしまい、チャージ残高を回復できなくなったり、再発行手数料が発生したり、中古として譲渡した端末を他の人が使えなくなったりするので、気をつけたい。

逆に、中古端末を購入する際は、「おサイフケータイ」のメモリがクリア済みになっていることを確認しよう。

メモリ確認方法

  1. プリインストールされている「おサイフケータイ」アプリを起動する
  2. 説明が表示された場合は、何度か左にスワイプして終わらせる
  3. 左上の三本線をタップ
  4. 「サポート・規約」をタップ
  5. 「メモリ使用状況」をタップ
  6. 「おサイフケータイのメモリ使用状況」が表示されるので、表示された全項目が「0 / xxxxブロック」または「未利用」になっていればOK。(右図

上図のように「共通領域」のみが表示される場合と、右上図のように「共通領域」と「鉄道・バス領域」が表示される場合があるが、表示される全てが 0 になっていればOK。

なお、一部の機種(2019年以降に発売された、SuicaとPASMOを共存できる機種に多い)では、ブロック数ではなく、「未利用」または「利用中」と表示される。

機種変更方法

モバイルSuica、モバイルPASMO

「おサイフケータイ」アプリでの機種変更手続き

機種変更手続きには別途「おサイフケータイ」アプリが必要になる。

おサイフケータイ対応機種には大抵プリインストールされているが、Pixelシリーズなど一部の機種では別途 Google Playよりインストールする必要がある。古いバージョンが入っているとエラーになることがあるので、最新版に更新しておこう。

また、Googleアカウントでのログインが必要になるので、(Google系サービスの利用に必須なので無い人はいないと思うが)アカウントのIDとパスワードを確認しておこう。

モバイルSuicaは、2021年 3月21日のリニューアルより、iPhone から Android への移し替えもできるようになった(Android から iPhone への移し替えは以前より可能)。

モバイルPASMOでは、iPhone から Android への移し替えはできない。

詳しい方法は下記リンク先を参照。


非接触決済(nanaco、WAONなど)

nanacoモバイルの例
アプリを起動し、右下の「機種変更」から機種変更手続き(メモリクリアと引継番号の発行)ができる

各アプリに「データの預け入れ」「機種変更」などの機能が付いているので、それを使って機種変更手続きをする。詳細は各リンク先を参照。

Google Pay アプリで発行した場合も、機種変更手続きは Google Pay アプリでは出来ないので、各専用アプリをダウンロードして実施する必要がある[1]

ちなみにモバイルSuicaなどの一部サービスでは機種変更しなくてもSIMカードが変わると使えなくなるため、SIMカードを入れ替えるだけでも、機種変更と同じ手続きが必要になる。SIMカードを入れ替える際にも注意しよう。

また、ログインパスワードなどを忘れていると機種変更後の手続きができなくなることがあるので、事前に確認しておこう。

auじぶん銀行のスマホデビット

スマホデビットは QUICPay を使っているが、登録・削除には Google Pay アプリを使う

また、おサイフケータイとは無関係だが、同行の「スマホ認証サービス」を登録していて、電話番号が変更になる場合は、変更前に「じぶん銀行」アプリでも機種変更手続きが必要。事前に手続きをせずに以前の電話番号が使えなくなってしまうと、機種変更後の新端末にアプリを入れても使えず、本人確認など面倒な手続きが発生するので、要注意。 (電話番号が変わらない場合や、「スマホ認証サービス」を使っていない場合は、新しい端末にアプリを入れてログインすればOK。)

メルカリのメルペイ

メルカリアプリを起動→メルペイ設定→iD決済の設定、より削除する。 [2][3]

スマホ用電子証明書

スマホ用電子証明書の失効手続・一時利用停止のお願い(デジタル庁)

2023年 5月11日より始まった国の「スマホ用電子証明書搭載サービスを使っている場合は、「マイナポータル」アプリ失効手続きが必要。

手続きの際には、登録時に設定したスマホ用署名用電子証明書のパスワード(半角英数字6~16文字)が必要。申請は24時間できるものの、申請が処理される時間帯は7:30~20:00に限られている。受付時間内に手続きすれば基本的には数分で完了するが、失効手続き完了が翌日以降になることもあるので、早めに手続きしておこう。

深夜・早朝に申請した場合は、手続き完了後に旧機種をインターネット接続した状態で再度「マイナポータル」アプリの「マイページ」を開くと消去される。

機種変更の場合は、新しい機種にて「スマホ用電子証明書」の搭載手続きが完了すると、旧機種の証明書は自動で失効になるので、その後、旧機種をインターネット接続した状態で「マイナポータル」アプリの「マイページ」を開くと消去される。

ちなみに「スマホ用電子証明書」を搭載できるのは「おサイフケータイ」に対応する比較的新しい機種に限られる(⇒スマホ用電子証明書に対応しているスマートフォン)。非対応機種に機種変更する場合は、旧機種で上述の失効手続きが必要。

マイナンバーカードと同等の機能(署名用及び利用者証明用の電子証明書)をスマートフォンのセキュア・エレメントに搭載する機能。
スマホ用電子証明書の登録時に設定したパスワードが不明の場合は、スマートフォンをインターネットに接続した状態で、マイナポータルアプリをアンインストールすると、電子証明書が失効し、スマートフォン内の関連データも削除されると案内されている


かざすフォルダ(ポイントカードなど)

かざすフォルダ」の削除方法

Ponta(ローソン専用)Tポイントdポイントクロネコメンバーズなどが入っている「かざすフォルダ」はまるごと削除できる。各ポイントカードは新しい機種で個別に入れ直せば再度使えるようになる(機種変更手続きは不要)。

  1. プリインストールされている「おサイフケータイ」アプリを起動する
  2. 「かざすフォルダ」をタップ(うまくいかない場合は Chrome ブラウザを起動して https://kaza-s.jp/ を開いても良い)
  3. 右上の三本線をタップ
  4. 「Q&A」をタップ
  5. Q&A が表示されるので、スクロールして中央付近にある「かざすフォルダの削除方法は?」を見つけて「こちら」をタップ(右図
  6. 「かざすフォルダ削除」ボタンが表示されるので、タップ
  7. かざすフォルダ削除完了」と表示されればOK


全てのポイントカードを削除後、「かざすフォルダ」だけが残っている状態

または、ポイントカード類を個別に確認・削除したいときは:

  1. プリインストールされている「おサイフケータイ」アプリを起動する
  2. 「かざすフォルダ」をタップ(うまくいかない場合は Chrome ブラウザを起動して https://kaza-s.jp/ を開いても良い)
  3. 「フォルダを見る」をタップ
  4. 登録済みサービス一覧が表示されたら、右上の「整理」をタップ
  5. 各サービスの右側に「削除」ボタンが現れるので、タップ
  6. 4. と 5. を繰り返し

全てのポイントカード類を削除しても「かざすフォルダ」は残るので(右図)、メモリを完全クリアしたい場合は「かざすフォルダ」自体の削除が必要

なお、「かざすフォルダ」はSIMカードを入れ替えてもそのまま使えるので、SIMカードを交換する(端末をそのまま使う)場合は消去する必要はない。

また、「かざすフォルダ」には Android OS リセット後もアクセスできるので、もしうっかり消去前に端末リセットしてしまった場合や、メモリクリアされていない中古端末を購入してしまった場合には、Chromeブラウザを起動して https://kaza-s.jp/ を開いてみよう。「かざすフォルダ」が表示された場合は、上述の手順で削除できる。

ヨドバシカメラの消去(登録解除)例

上記以外のポイントカードなど

「かざすフォルダ」に入っていないポイントカード類もあるので(ヨドバシカメラ ゴールドポイントカードANAJAL など)、それらは各専用アプリを使って削除する必要がある。

ちなみにヨドバシカメラの場合は、新しい端末にアプリを入れて設定すれば、ポイントも引き継がれる。

端末のメモリを使わないサービス

シェアサイクルスマートEXスターバックスなど、端末側のメモリを使わない(FeliCaのIDを読み取っているだけの)サービスもあるので、それらはクリア不要。

ただし端末を譲渡等した後の不正利用を防ぐため、上述のメモリクリアを行うとともに、各サービスのホームページや専用アプリなどで変更・削除手続きをしておこう。

最後の手段

いろいろ試してもクリアできず、何を使っていたのかも分からないとき(中古端末を購入して残っていた場合など)には、端末を販売したキャリアまたはメーカーに持ち込むと強制的に消去できる。

ただし、この方法で強制クリアすると、残っているデータを取り戻せない(残高がある場合は失われる)ことがあるので、あくまで最後の手段。チャージやポイントなどをうっかり失わないためにも、使い終わったら自力で消去するのが基本だ。

  • NTTドコモが販売する端末の場合は、ドコモショップに設置されている「DOCOPY(ドコピー)」を自分で操作して消去できる。
  • auソフトバンクが販売する端末の場合は、各キャリアショップに持ち込むと、本人確認を経て消去してもらえる。
    (ワイモバイル・UQモバイルはどうなんだろう…筆者は試したことがないのでわからない。)
  • それ以外の端末(SIMフリー、楽天モバイル)の場合は、メーカー修理扱いになり、修理代が発生する。

モバイルSuica トラブルシューティング

中古端末を購入した場合などに稀に起きるエラー

数ある「おサイフケータイ」アプリケーションの中でもモバイルSuicaは厳格なので、思いもよらないトラブルが起きることがある。

中古端末を購入した場合など

中古端末を購入した場合や、知人等から譲り受けた端末で起こりがちだが、以前の持ち主が正しく退会/機種変更手続きをせずに端末を手放し、ドコモショップの「DOCOPY」や他のキャリアショップなどでの強制消去(#最後の手段)に頼ると、再度入会手続きができないことがある。

この場合は、表示された電話番号に平日日中に電話し、表示された文字列(IDm)と機種名、中古端末を購入した旨を伝えると、対応してもらえる。

SIMカードの交換

かつては、端末の機種変更をしない場合も、SIMカードを交換すると、モバイルSuicaアプリが起動しなくなることがあった。同じ機種を使いながらキャリアを乗り換える場合などは、SIMカードを交換する前に機種変更(預け入れ)手続きを行い、SIMカードを入れ替えた後に機種変更(書き戻し)手続きをする必要があった。

いつの頃からか、SIMカードの交換は問題なくできるようになった

機種変更時に引き継がれる情報

機種変更手続きをすると、SF(チャージ)残高はもちろん、Suicaグリーン券やモバイルSuica特急券、乗降履歴なども新端末に引き継がれる(2021年 3月21日のリニューアル以前の例)

モバイルSuicaの機種変更手続きをすると、SF(チャージ)残高はもちろん、Suicaグリーン券モバイルSuica特急券2020年 3月13日まで)、乗降履歴なども律儀に新端末に引き継がれる(右図)。

まるごとコピーされたように感じるが、よく見ると Suica ID番号は変わっている2021年 3月21日のリニューアル以降に発行されたモバイルSuicaは、Suica ID番号が変わらずに機種変更できるようになった

また、バナー表示の無効化など、アプリの設定は引き継がれないので、再度設定する必要がある。2021年 3月21日のアプリリニューアルよりバナー欄は廃止された。

Suica ID番号が変わる

機種変更手続きをすると Suica ID番号が変わることがあるので、Suica ID番号を登録するサービスでは、新しい Suica ID番号で登録し直す必要がある。

以前は必ず変わっていたが、2021年 3月21日のリニューアルより、変わらずに移し替えられるようになった。ただし手続き方法によっては変わることがあるようなので、移し替え前後で変更の有無を確認しよう。

例えば東海道・山陽新幹線の「スマートEX」や、東北・山形・秋田・北海道新幹線、上越・北陸新幹線の「新幹線eチケットサービス」(「モバイルSuica特急券」から変わって2020年 3月14日から利用開始)が該当する。

このほか、モバイルSuicaを各種キャンペーン等に登録している場合は、機種変更すると応募し直す必要が生じたり、無効になったりすることがある。

JRE POINT は更新手続き不要

モバイルSuicaで電車に乗ったり買い物したりすると貯まる JRE POINT については、モバイルSuicaの機種変更手続きをした翌日に、Suica ID番号が自動的に更新されるので、特段手続きは不要。

ただし機種変更手続きした当日は、ポイント交換したグリーン券を受け取れない等の不都合があり得るので、気をつけよう。

Android OS 旧バージョンのサポート打ち切り

フィーチャーフォン(いわゆるガラケー・ガラホ)向けサービスは、2020年 2月25日または12月22日までで打ち切られる。

また、Android 6.0 未満を搭載するスマートフォンは、2021年 2月までで終了(使えなくなる)が予告されている。

サービス終了した端末では、チャージなどの購入操作はもちろん、機種変更手続き(預け入れ操作)もできなくなってしまう。機種変更してモバイルSuicaを使い続けるにせよ、チャージ残高を使い切ってカードタイプに戻るにせよ、早めに準備しておこう。

ApplePay の Suica

iPhone シリーズでは iPhone 7 以降(日本以外で販売された端末は iPhone 8 以降)に FeliCa が搭載されているが、iOSでは独自の仕組みを採用しており、「おサイフケータイ」とは呼ばれない。

iPhone では独自の仕組みを使っており、Apple Pay の一部として、Wallet ごと iCloud にバックアップする仕組みになっている。機種変更(移し替え)時は予め 旧端末の Wallet が iCloud に同期している状態にしてから、旧端末の Wallet に登録されたカードを削除し、機種変更後の新端末で同じ Apple ID を使って Wallet を同期した上でカードを追加する手順になる。

FeliCa と Suica

Suicaの登場から20年近く経ち、スマートフォンひとつで電車やバスに乗れて、買い物もできる時代が到来しつつある
(写真は Rakuten Mini

FeliCa(フェリカ)は、JR東日本ソニーが共同開発した、Suica(スイカ)を動かすための非接触通信技術。ICカード乗車券の仕組みは1987年頃より開発されてきたようだが、2001年に実用化された。 (なお、Suica開始前の1997年に香港八達通でFeliCaが導入され、世界初の非接触乗車券になった。)

Suicaは2019年末時点で発行枚数が8139万枚、月間の利用件数が2億5261万件(鉄道・バスの利用と買物等を含んだ件数)まで拡大しており[4]、交通系電子マネーでは世界に類を見ない規模に成長した。

また、Suicaの普及により、日本国内ではFeliCaを使った交通系ICカード乗車券の仕組みが全国に拡大し、デファクト・スタンダードになっている。 Suica互換のPASMOに加え、サイバネ規格に準拠した全国 9 のFeliCaを使ったICカード乗車券【SAPICAKitaca、函館市 ICAS nimocaTOICAmanacaICOCAPiTaPaSUGOCAnimocaはやかけん】との相互利用が実現している。

このほか、仙台市「icsca」新潟交通「りゅーと」ことでん「IruCa」広島電鉄「PASPY」なども FeliCa を採用しており、これらの採用地域では Suica などのICカード乗車券も利用できる(片方向乗り入れ、逆は不可)。

日本国内では交通系以外にも、流通系(nanacoWAON楽天Edy)や信販系(JCBQUICPay」)、およびNTTドコモが運営する「iD」の非接触決済システムでも FeliCa が使われており、2019年までは日本の非接触決済ではほぼ FeliCa 一択だった。

FeliCa は ISO/IEC 14443(近接型非接触ICカードの国際標準規格)では国際標準になり損ねたが、後にJR東日本などの努力により、NFC (ISO/IEC 18092) では国際規格入りを果たした (NFC-F)。

FeliCa (NFC-F) は世界で最も利用者の多い首都圏の鉄道利用に対応するため、世界で最も厳しい 0.3秒以下での改札処理、電池不要(リーダライタから無線電力供給)、サーバレス動作(回線断など障害が起きてもカードと改札機のみで処理可能)を実現している一方で、MiFARE (NFC-A) などの類似技術に比べてコスト高になることなどから、日本ほどの高速処理を必要としない海外での普及は思うように進まず、シンガポールEZ-Linkなどの早期にFeliCaを導入していた事業者でも NFC-A に切り替える事例が続出しており、現在はほぼ日本と香港(八達通)でしか使われない技術になっている。

また、日本においては FeliCa が事実上の標準になっているが、FeliCa の導入コスト負担が見合わない(FeliCaほどの高性能を必要としない)中小地方鉄軌道・バス事業者では導入が進まず、国内でも NFC-A/B を採用する事例が散見される(沖縄の「OKICA」など、ただしゆいレールの改札機は観光客向けにSuica等にも対応している)。

このほか、一部チェーン店のPOSレジでは、2020年の導入完了を目標に、NFC-A を採用する Mastercard ContactlessVisa payWave にも対応する作業が進められている。

セキュア・エレメント (SE)

FeliCa決済時はAndroid等のスマートフォン用OSを経由せず、決済端末(改札機など)から無線チップを経由して直接セキュア・エレメントに送られて処理される仕組みになっている

「おサイフケータイ」は携帯電話・スマートフォン端末に内蔵されているが、決済時はAndroid等の携帯電話・スマートフォン用OSを経由せず、決済端末から無線回路を経由して直接「セキュア・エレメント」という専用ICに送られて処理される。このため、高速処理を実現するとともに、不正行為が困難な仕組みになっている。

以前はFeliCa専用の無線ICと「セキュア・エレメント」が搭載されていたが(右図の左側)、FeliCa規格が国際規格NFCに採用されたことから、現在では汎用のNFCチップが使われている。ただし決済用には依然として専用の「セキュア・エレメント」が使われており(右図の中央)、これが搭載されていないスマートフォン(海外端末など)では、NFCを搭載していても「おサイフケータイ」は使えない。

NFC-A/B で使われるセキュア・エレメントを内蔵したNTTドコモのSIMカード(UICC)

仕組みとしては、SIMカードに「セキュア・エレメント」を搭載する(右上図の右側)こともできるようになっているし、実際セキュア・エレメントを内蔵したSIMカード(UICC)も登場しているが、FeliCa (NFC-F) では今も事実上「セキュア・エレメント」専用ICが必須になっている。

これに対して、海外ではオランダ・フィリップス社(現NXP社)が開発した MiFARE(マイフェア)の流れを汲む NFC Type A (NFC-A) を使う非接触決済が主流だが、独立したIC(セキュア・エレメント)を使わない「ホスト・カード・エミュレーション」(Host Card Emulation, HCE) 方式が開発され、Mastercard contactlessVisa payWave などのクレジットカード国際ブランドが採用したことから、日本でもコンビニチェーンなどで対応作業が進められている(日本では FeliCa と NFC-A の両方に対応したPOSレジが多く導入されている)。

HCEでは決済に Android 等のスマートフォン用OSを使うものの、スマートフォン等にはクレジットカード自体ではなく、「トークン」と呼ばれる情報を保存し、利用回数や期間を短くしたHCE専用の使い捨てカードを発行するような形で、不正利用リスクを小さくした形で使われている。

専用のハードウェアを使わないため、インターネット接続が無い状態では短期間で利用不可になる、高額決済時はインターネット接続が必要といった制限はあるものの、コスト面ではプラスになるし、元々クレジットカード決済ではオーソリに数秒程度かかるのは普通なので、FeliCaのような超高速処理は必要ない。実際に Mastercard や Visa が採用したことで、海外ではHCE方式がスマートフォンを使った非接触決済のデファクト・スタンダードになりつつある。

GP-SEとマイナンバーカード機能

2019年以降に発売された機種より順次、セキュアエレメントが GP-SEGlobalPlatform準拠の Secure Element)に置き換わっている。

筆者が試した範囲では、Xperia 1Xperia 5Redmi Note 9TOPPO Reno5 AMi 11 Lite 5GAQUOS R6Pixel 6 ProXperia PRO-IXperia 5 IIIAQUOS wishRedmi Note 11 Pro 5GReno7 APixel 7 Pro などが該当する。エントリークラスからハイエンドまで、近年発売されている多くの機種が切り替わっている。

お馴染みの「おサイフケータイのメモリ使用状況」表示が変わったことは前述したが、GP-SEが搭載されている機種ではメモリ容量が増えて、ブロック数ではなく「未利用」「利用中」表示となった。また、SEID (Secure Element ID) の桁数が長くなっている、交通系ICの複数枚発行に対応している(Suica・PASMOの共存が可能になっている)といった特徴がある。

セキュアエレメントは、これまでは専らモバイルSuica・モバイルPASMOや流通系FeliCa決済で使われてきたが、今後はこれを使って2022年度中に「マイナンバーカード」の電子証明書機能を搭載するようだ(2022年10月13日更新、2023年 5月11日からAndroidスマートフォンへと格納できるように準備を進めているそうだ)。⇒2023年 5月11日から始まった

実用化されれば、マイナンバーカードを持ち歩かずとも、スマートフォンで公的個人認証サービスを利用できるようになりそうだし、忘れやすい利用者証明用電子証明書のパスワード(4桁の数字)が指紋認証で代用できるようになるかもしれない(検討中)

(医療機関が対応すれば)健康保険証機能も利用できるし、(携帯電話会社が対応すれば)eSIM再発行時の煩わしい本人確認も簡略化されるだろうか。

GP-SEの概要
出典:2021年 9月27日 総務省資料(デジタルサービス・プラットフォーム技術研究会)
Androidスマートフォンへの(マイナンバーカード機能)搭載の実現方法
出典:2021年 9月27日 総務省資料(デジタルサービス・プラットフォーム技術研究会)

参考リンク

関連記事

筆者がレビューした対応端末