SoftBank on LINE
SoftBank on LINE (ソフトバンク オン ライン) は、ソフトバンクが提供するモバイルデータ通信サービス。
また、“ソフトバンク”ブランドで提供される無制限プラン「メリハリ無制限」についても本稿で触れる。
“ワイモバイル”ブランドについては別ページでまとめているので、そちらを参照されたい。
SoftBank on LINE
2020年12月22日発表、2021年3月開始予定のオンライン専用新ブランド。
名前の由来は仮想世界…ではなく、「お客様が誤解しないように」ソフトバンク株式会社が提供するオンライン専用&LINEのプラットフォーム活用を表す名前にしたそうだ。
データ通信は4Gと5Gを20GBまで使える、月額3,278円(税別2,980円、ユニバーサルサービス料別途)の1プランのみ。データ容量の追加は550円/1GB。
音声通話は、1通話あたり5分までの かけ放題が含まれる(5分をこえる通話料は22円/30秒、SMSは3.3円/通)。別途1,100円で、国内通話かけ放題オプションが用意される。
新規契約等の手続きはオンラインのみ。Webのほか、LINEアプリでも手続きできるようになると謳われている。一方、ソフトバンクショップやワイモバイルショップでは手続きできない。サポートもショップやコールセンターでは提供されないと思われる(LINEでサポートが提供されるかは不明だが、基本サポート無しと思っておく方が良さそう)。
主な条件をahamoに合わせてきたが、本プランの特徴はLINE(トークと通話)が使い放題になることと、ソフトバンクで初めてeSIMに対応する。
未発表の要素も多く、今詰めているそうだが、国際ローミングはソフトバンクやワイモバイルのものがベースになりそうだという。
キャリアメールの有無も未発表だが、ahamo対抗プランだし、スマートフォンとLINEを使うことを前提にしているので、E-mailアドレスは付かない(GmailやiCloudメールなどを利用すればいい)と思っておく方が無難だろうか。
なお、本プランは既存の「LINEモバイル」とは無関係だが、本プラン提供開始とともに、MVNOの「LINEモバイル」は新規受付を終了し、ソフトバンクに吸収されるという(協議中)。 本プランはMNOであるソフトバンク株式会社の一事業部が提供することになり、“ソフトバンク”と同等の通信品質になると謳われている。
機種・エリア
対応機種は現時点で不明※だが、SIMのみ契約(端末持ち込み)には対応すると思われる。 また、通常のSIMカードに加え、eSIMにも対応予定となっている。
エリアは“ソフトバンク”や“ワイモバイル”と同じ。昔はソフトバンクといえば山間部などで使い物にならなかったが、2012年にプラチナバンドを獲得してからは一挙に改善し、現在は登山道などの無住地域を除いて遜色なく、概ね全国で快適に使える。
バンド構成も同じだが、3Gが使えるかは不明。3Gが使えない場合は、ソフトバンクのVoLTE通話に対応する機種※を使う必要がある。
【対応見込みのバンド構成】※太字は主力バンド
- FD-LTE (4G) Band 1, 3, 8, 11, 28(B)
- TD-LTE (4G) Band 41, 42
- 5G Band n3, n28, n77 (Sub-6), n257 (mmWave)
同社が販売する端末に限らず、家電量販店などで購入できるSIMフリー機種も、上記バンドに対応していれば使えるものと期待される(無保証、ノーサポート)。
“ソフトバンク”“ワイモバイル”向けの機種(2017年8月以降に発売された機種)やSIMフリーの機種を、中古店などで購入して使うこともできそうだが、上記のバンドに対応していることと、“ソフトバンク”“ワイモバイル”のVoLTEに対応していることを確認しよう。
ワイモバイルとの違い
中身の通信・通話サービスの品質は変わらない(ただし3Gが使えるかは未公表)。
料金は、同じ20GBのプランで比べると、ワイモバイルの「シンプルL」の方が税別800円、月額基本料が高く設定されている。また、ワイモバイルの「シンプル」は通話定額が別料金になっており、通話定額「スーパーだれとでも定額」は税別1,700円なので、通話が多い人は計1,500円も高くなる。追加データ容量も倍額(ワイモバイルでは550円で0.5GB)だ。
半面、ワイモバイルでは小容量の「シンプルS/M」も選択できることと、家族割引サービスが提供される。例えば夫婦で「シンプルM」(10GBまで)を1つずつ使い、通話はほとんどしない場合、ワイモバイルの方が税別500円ほど安くなる。
通信品質に違いはないが、この価格差は「店舗やコールセンター・コンタクトセンターのサポートを極限に削減」して安くしたと説明されていた。サポートが要る人は“ワイモバイル”か“ソフトバンク”を利用してほしいということだろう。
節約しつつもデータ容量はなるべく多く使いたいという人は、端末の設定などはサポートに頼らず自力で解決し、SoftBank on LINE を選ぶと良さそうだ。逆に、データ容量は毎月ほぼ一定だが端末の設定などに自信がないという人は、ワイモバイルを使うと良いだろう。
SoftBank on LINE はオンライン契約専用(店頭契約不可)で、各種手続きをLINEアプリからもできるようになる見込み。法人契約の可否は不明。 ワイモバイルはリアル店舗/オンライン両方あり、法人契約も可能で法人契約割引もある。
ポイント付与は未公表だが、両方とも付かないと思っておけば良いだろう(少なくとも現行のワイモバイル「スマホベーシックプラン」はポイントが付かない)。
細かいところでは、SoftBank on LINE では LINE のトークと通話など※が使い放題になる一方、ワイモバイルでは「Yahoo!プレミアム会員」が無料で付いてきて、Yahoo!ショッピングやYahoo!トラベルなどを利用するとPayPayボーナスを多くもらえる特典がある。どちらが良いかは使う人次第だろう。
発表会の様子
ソフトバンク株式会社 新しい料金サービスに関する発表会(2020年12月22日開催)、プレゼン資料
- 20GB+「LINEがギガノーカウント」を月額2,980円で提供 ~オンライン専用の新ブランドを立ち上げて2021年3月にサービス開始~(ソフトバンク、2020年12月22日)
- “ソフトバンク”、データ容量無制限の4G/5G共通の料金サービス「メリハリ無制限」を提供開始(ソフトバンク、2020年12月22日)
- “ワイモバイル”、5Gサービスを提供開始 ~月額料金がずっと変わらない、シンプルな4G/5G共通の新料金サービスラインアップに刷新!~(ソフトバンク、2020年12月22日)
メリハリ無制限
NTTドコモの新料金プラン「ギガホ プレミア」への対抗で登場した、“ソフトバンク”ブランドの新プラン。2020年12月22日発表、2021年3月開始予定。1プランで4Gと5Gの両方に対応(3G対応可否は不明)。
プラン名の通り、スマートフォン単体でのデータ容量は無制限になる(テザリングとデータシェアは合計30GBまでに制限される)。
料金は競合の「ギガホ プレミア」よりわずかに安くなるよう設定され、3GB未満の利用月は自動的に税別1,500円の値引きが入る作り込みも同じ※。実際、「ギガホ プレミア」はよく出来ていたと思う。
ドコモではVoLTE未対応の端末で5G対応SIMを使ったときなどに不具合が生じることがあるが、ソフトバンクにはそれが無いようなので、ソフトバンクでは4Gプランと5Gプランを分けず一本化してきた。その面でも、とてもシンプルになっている。
ただし、従来の“ソフトバンク”では Android と iPhone でSIMカードを分ける(≒ユーザーがSIMフリー端末などを購入して差し替えて使うことが難しい)など、使い勝手の悪い面があった。今後どうなるかは不明だが、プランだけでなくSIMカードなども一本化されて、SIMフリー機種なども含めて利用できる機種が無制限になるのか否かは注視したいところだ。
2021年3月以降、“ソフトバンク”はこのプランに実質一本化されそうだ。大容量を使いたい人はこれ※、容量20GB以下で足りる人は“SoftBank on LINE”や“ワイモバイル”と、きれいに住み分けができている。
“ソフトバンク”ブランドでは「ミニフィットプラン」(ドコモの「ギガライト」に相当)も引き続き提供される※そうだが、ドコモの「ギガライト」と同じ理由で、2021年3月以降のソフトバンクショップでは実質「メリハリ無制限」のみが販売されることになりそうに思う。
“ソフトバンク”と“ワイモバイル”を行き来する際の注意点
“ソフトバンク”と“ワイモバイル”は同じ会社のサービスにもかかわらず、“ソフトバンク”の各プランから“ワイモバイル”の各プランに変更する、またはその逆は、MNP扱いとなる。
今回新たに始まる“SoftBank on LINE”への切り替え手続き方法は不明だが、ホームページでは「ソフトバンクのブランドとして提供」するとしている一方で、発表会では「そのお客様にとってのメインブランド」「ワイモバイルと同じような形で」「新たなブランド」などと説明されていたので、どうなるのかわからない(笑)。
先日ドコモの新社長が威風堂々とサブブランド論議をぶった切っていたが、そこに言葉を選びながらも相乗りしてきたね。
“ソフトバンク”の従来プランから「メリハリ無制限」に切り替えるのは、おそらく容易なプラン変更手続きでできるようになると思われるが、切り替えると旧プラン※に戻ることはできなくなる。
“ソフトバンク”は今後「メリハリ無制限」のみの実質1プランになりそうなので、あまり使わないから料金を安くしたいと思っても、“ワイモバイル”や他社に「のりかえ」る※以外の選択肢はなく、面倒な手続きが発生するので、毎月のように気軽に「のりかえ」るわけにはいかないだろう。
ワイモバイル同士であれば、シンプルS/M/Lの間のプラン変更は容易なので(My Y!mobileからオンラインで手続きできる)、必要に応じて毎月でもプラン変更できるし、その度に家族割を組み直すといった手間もない。
また、“ソフトバンク”と“ワイモバイル”では家族割引サービスも別扱いになるため、例えば主回線では無制限プランを使って、家族が使う副回線ではワイモバイルを使う、といった使い分けに不自由する(割引サービスを受けられない)。
端末(機種)も“ソフトバンク”と“ワイモバイル”で別々のラインアップになっているため、普段はWi-Fiを使うのでデータ容量はワイモバイルのプランがちょうどいいが端末はハイエンドを使いたい、逆に端末は廉価版でいいからソフトバンクで大容量プランを使いたい、といったニーズにも応えきれていない(中古端末を購入してSIMのみ契約すれば可能だが)。
こうした縦割りの弊害は存置されたまま、2021年3月以降は、さらに第3のブランド“SoftBank on LINE”が加わることになる。2020年12月22日の発表会後の質疑でも記者から質問が出ていたが、言葉を濁して逃げていたので(「ブランドの妙」って何?)、この縦割りの弊害を解消する気はなさそうだ。
余談
振り回されるLINEモバイル
前月まで「ソフトバンクブランドの値下げについてはまったく思っていない」と言っていたソフトバンクは、競合のahamo発表からわずか20日足らずの間に大鉈を振るい、2020年12月22日、全ブランドの刷新とともに、「LINEモバイル」事業の終了※が発表された。
いろんな意味でahamoに劣らない衝撃的な発表だったと思うが、ソフトバンクは同日付けで「当社によるLINEモバイル株式会社の完全子会社化および吸収合併に向けた検討に関するお知らせ(PDF形式)」というプレスリリースを出している。
一方、「スマホ基本料ワンコイン」で頑張ってきたLINEモバイルは、同日付け公式twitterで「本日ソフトバンク株式会社より、LINEを利用した新しいプラン「SoftBank on LINE」の発表がありましたが、「LINEモバイル」をお使いの皆様は、引き続き、現在の契約内容でご利用いただけます。よろしくお願い申し上げます。」とメッセージを出した(右上図)。
続いて「「SoftBank on LINE」発表に伴う「LINEモバイル」のサービスに関して(サービスは継続・強制移行はありません)」と発表され、LINEモバイルのサービスを終了する予定はないとされた。また、「LINEモバイルの新規申込の受付終了に関しては、ソフトバンク株式会社およびLINE株式会社で協議をしていく予定」(これ以外は未定)だとしている。親会社の意向次第にはなるが、当のLINEモバイルにはまだ続ける気があるぞという気持ちが表れている。
LINEモバイルの終了・吸収の話、発表会ではすでに決まったことのように断定口調で話されていたが、実は今後協議することであり、今はまだ検討することが決まった段階だという。あまりの急展開だったが、当事者にも寝耳に水だったのだろう。
LINEモバイルにソフトバンクが出資したときも、LINEがZHD(ヤフー)と合併する話も、唐突に出てきた感があったが、今回はその比ではなかったように思う。

元々ソフトバンクは競合他社を弱らせてから吸収し、取り込んだ人材をうまく使って大きくなってきた。イー・モバイルにせよ、WILLCOMにせよ。今回のLINEは競合ではないが、強引に吸収する手腕は重なって映る。
ahamo対抗でソフトバンクが「LINE」を切り札にしたい気持ちはわかるが、今回の話は少々焦りすぎにも見える。この話、うまくまとまるのだろうか。LINEモバイルの既存ユーザーはどうなるのだろうか。吸収後のLINEモバイルは、果たしてうまく機能するのだろうか?
(まあ、嘉戸氏を役員に招き入れるくらいのことはするかもね。NTTやKDDIとソフトバンクの最大の違いは、そうした大胆な人事が出来うるかどうか、なのかも。)
「LINEモバイル」はソフトバンクが51%出資して子会社化したものの、元々は独立したLINEのMVNOとして始まっており、ドコモやauの回線も販売しているし、サポート等の問い合わせをLINEトークで受け付けるとともに、家電量販店などの店頭に代理店窓口も設けている。
唐突に出てきた「LINEモバイル」の完全子会社化だが、そうなればドコモやauの回線販売は打ち切られるだろう。では「LINEモバイル」を吸収する狙いは何だろうか。単に「LINE」ブランドが重複しないよう閉鎖したいということかもしれないが、またはLINEモバイルの運営陣をソフトバンクに招き入れたいのか、LINEを使ったサポートや販売体制を引き継ぎたいのかもしれない。
今はまだ憶測しかできないが、2021年3月までには見えてくることだろう。
参考リンク
- w:ソフトバンク
- w:孫正義
- w:宮内謙
- w:宮川潤一
- 嘉戸彩乃とは何者? 入社1年でLINEモバイルの社長に抜擢された、その理由とは。(エンジャパン)
- LINEモバイルがソフトバンクと組んだ理由 嘉戸彩乃社長に聞く舞台裏と展望(ケータイWatch)
- MVNOに聞く:LINEモバイルは、なぜソフトバンク傘下になったのか 嘉戸社長に聞く (ITmedia Mobile)
- 嘉戸社長が考える“新規事業”に必要なこと--「LINEモバイル」が生まれるまで (cnet japan)
- ソフトバンクはなぜ3ブランドで料金プランを刷新したのか? 榛葉副社長に聞く(ITmedia Mobile、2020年12月22日)
- ソフトバンク榛葉副社長に聞く、「月20GB/2980円」の“ SoftBank on LINE”など3ブランド一挙新料金の狙いとは(ケータイWatch、2020年12月22日)